私は兄の代わりに
この世界にやって来た。
そんな私に
求められたのは
兄をコピーすることだった。
両親は
兄は
こんな風だった
あんな風だったと
懐かしそうに
嬉しそうに
残念そうに語った。
それに引き換え
私は褒められることも無く
あれがだめこれがだめと
言われ続けた。
一生懸命
兄を演じることを頑張ったけれど
両親の中で
良い思い出としてしか
残っていない人間と
目の前の
欠点だらけの人間では
そもそも
相手になるはずもなかった。
私は勝ち目のない
無謀な戦いをしていたのだ。
エクトンの個人セッションを
受けたとき
「ご自分では
認識しているかどうか分かりませんが
お兄さんに
怒りを感じていらっしゃいます」
そう言われた。
両親に対してはともかく
兄に対しては
まったくそんな認識はなかった。
死んだ人間に対して
そんな気持ちを
抱くなんてありえない。
でも
本当は私の心の奥底には
兄に対する怒りがあったのかもしれない。
今でも
明確に怒りを
感じることは出来ていない。
もしも今後
感じることがあれば
そのときは
何も判断を加えずに
ただ「怒り」を感じてみようと思う。
それは
決して兄に対する
今の私の「怒り」の感情では無く
もっと以前に
感じてあげなければならなかった
ただの僕の「怒り」の感情なのだから。
ここまで
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