今を生きて、過去を自分に馴染ませる

「やまない雨はない」
倉嶋 厚著

自分も癌にかかり、
奥さんも癌で亡くし、
その後、
うつ病を患います。

その本の一文に、
こんな文章があります。

「妻に逝かれてしばらくは、妻がいてくれた頃の生活が本当で、妻のいない今の生活は、からっぽのどうしようもない時間の積み重ねにすぎないと思っていました。しかし、だんだん妻のいない事実と妻のいない生活に慣れてくると、これが今の「本当」であって、あのときの「本当」はあのときかぎりのものだということに気づくのです。」

とてもとても、
重い言葉ですよね。

奥さんと生きた時間が全てだった。

それは本当に本当に、
真実だと思います。

それ以外は、
おまけみたいなものでしか
なかったのでしょうね。

でも、
奥さんがいなくなったあとの時間も、
紛れもなく「本当」でした。

その「本当」の重さは、
まったく質の違う重さでしょうけど。

倉嶋さんは、
それを感じることができたのは、
諦めだと書いています。

そして、
それを可能にしたのは、時間だと。

人はどんなにあらがっても、
今を生きるしかありません。

今を生き、
今を重ねて、
人生を作っていきます。

今を生きることによって、
過去を毎瞬毎瞬、
作り替えていきます。

奥さんとの日々を、

喜びを感じながら、
後悔を感じながら、
感謝を感じながら、

今という瞬間で、色付けしていく。

過去は忘れ去るものではなく、
質を変えていくもの。

過去と自分を同質化し、
自分の奥に馴染ませていく。

倉嶋さんが、
札幌に赴任していたころ、
ある老人に出会い、
こう言われたそうです。
「昔は小春日和にやっておかなければならないことがたくさんあったから、せつなさを感じている暇なんてなかった」
「今は生活が便利になって、冬ごもりの準備も必要ない。近づいてくる冬をなすすべもなく待っているだけだから寂しいんだ」

なすすべもなく、
染み入るようにせつなさを感じること。

それだって、
今を生きる、
とてもとても大切な行為だと感じます。

ここまで
読んでいただき
ありがとうございます。

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